後悔の槍ヶ岳 [山歩き]
ああぁ、
いったい俺はこんなトコでナニやってんだか・・・
14キロのザックが両肩に容赦なく食い込み、
ジグザグの急登に、足を前に出す事すらままならない。
AM11時、
通常の休みの日なら、
居間にころがってテレビでも見ている時間だ。
ところが現状はどうだ、
信穂高温泉をAM5時に出発し、
かれこれ6時間は登り続けている、
が、ゴールは絶望的に遠い。
はるか遠くの稜線上、
ゴツゴツした岩の隙間に人工物らしきものが認識できるが、
どうやらあれが今日のゴール、
槍ヶ岳山荘らしい。
幻のようだ。
さらに30分、
飛騨乗越への分岐にたどり着いた。
カメラのズーム機能を用いれば、
槍ヶ岳山荘も少しは近づく。
しかし、カメラから目を離せば、現実は厳しい。
今のペースではゆうに3時間はかかるだろう。
さっきよりも100mは高度を上げた筈だが、
幻が現実味を帯びるには程遠い。
見えてはいるが、一向に近づいてこないという現実は、
さながら悪夢の中にいるような感覚すら呼び起こさせる。
「ああぁ、帰りてぇ~」
思わず弱音が口をつく、
しかし、行程の最終段階に足を踏み入れてしまった今は、
ひたすら前に進むしか道は残されていないのだ。
いったいなんでこんなことになってしまったんだろう?
机上の予定では、
今頃槍ヶ岳山荘に到着している筈だったのだが・・・
作戦は万全のはずだった、
苦しい時に笑顔をひねりだし呼吸を整える
『ニコニコ有酸素運動作戦』は、
標高2700mの現時点で頭痛がないことから、
うまくいっているようだ。
『あんよふかふかクッション作戦』は
まだ下りじゃないのではっきりしたことは言えないが、
感触は良さそうだ。
『炭水化物&塩分摂取、朝定食作戦』は
40分ほど前に行って、少し元気を回復した。
『サプリメントで疲れを持ち越すな作戦』は
1日が終わってみないと効果がわからない。
『ストックが鍵、膝を笑わせるな作戦』は
現在進行形だが、調子は上々。
と、
個々に見ていくと、
それぞれの作戦は効を奏しているようだが、
それが全体の成果として現れていない・・・・
・・・・
・・・・
つまりは、
・・・・
・・・・
すっかり、バテて疲れきってしまったということなんですよぉぉお!!
何が原因なのか・・・
寝不足・・・
確かに昨日仕事が終わってすぐに用意して、
風呂入って出発して・・・
途中のSAで休憩はしたが、ほとんど寝てないか・・・
だいたいザックが重過ぎるっ!
長丁場に備え水を大量に入れすぎた、
いくらなんでも5リットルは必要ないだろう。
消費した水は山小屋で補充できるし、
まぁ、途中で気付き2リットルほど沢に流したので
多少は楽になった。
・・・・
・・・・
言い訳ばっか思いつくが、
1度バテてしまうと容易には立ち直れない。
素晴らしい景色には目もくれず、
稜線目指して一歩一歩、一心不乱に登り続けるしかない。
「はぁ~、うちに帰りてぇ~」
今日中に下山するのは無理だから、
槍ヶ岳山荘に泊まることになるのだが、
明日ゆっくり起きたら、速攻で今日来た道を取って返し、
家に帰ってゆっくり休むんだっ!!
かたく心に決めてしまう。
んっ、縦走計画ぅ~?
無理無理無理っ!!
こんな状態じゃぁ自殺行為ですよっ!
山の怖さは知っているつもりです、
帰ります帰ります帰ります!!
単独だしね。
そこは自由が利いて良いところなんですよぉ~
そう決めると不思議に力が湧いてくるようだ、
なんとか頑張ってPM1時30分、
稜線にたどり着いた、
飛騨乗越だ。
やっと山の向こう側が見える。
正面に見える鋭角は常念岳だ。
ここにきてやっと、槍の穂先とご対面。
普段なら感動的な景色だが、
今の私にはその余裕が無い。
「ああ、いいね。」
軽くつぶやいて先を急ぐ、
まだゴールではないのだ。
テント場を過ぎると槍ヶ岳山荘と『槍』そのものが全景を見せる。
さすがの迫力にしばし呆然と見入ってしまう。
我に帰り、ラストスパート、
PM1時50分、槍ヶ岳山荘着。
ザックを降し『槍』と対峙。
山荘にはまだ入れない・・・
まだ、終わってないのだ。
・・・・
ザックを残し、空身で『槍』にむかう。
久しぶりの岩場で少し緊張する。
なめてかかると滑落死だ。
そして、PM14時10分、
3180m、槍ヶ岳山頂です。
ああぁ、今日のノルマがやっと終わった~
達成感というか義務感というか、
とにかく肩の荷がおりた瞬間でした。
360度の景色はサイコー!!
しかし、長居せずにすぐに降ります。
明日の朝また登ってから帰ろ。
・・・
下りのほうが緊張しますねぇ~
宿泊手続き時に予定を聞かれる、
見栄を張って南岳から新穂高に降ります。
などと答えてしまう、
ホントは今来た道を引返すつもりだよ~
・・・・
・・・・
でも、
・・・・
・・・・
もし体力が回復したら南岳ぐらいまでは歩けるか、
そしたら3000mの稜線を縦走したことにもなるし・・・
・・・
まぁ、明日次第だな。
PM5時の夕食まで時間があるので、
部屋着に着替えゆっくりする。
ここにきて少し頭痛が、そして眠気・・・
高山病の予兆だっ!
決して眠るまいっ!
昨年の剣山荘の轍は踏まぬぞ。
深呼吸し水分をたっぷり補給し
臨戦態勢はOK。
とは言っても『寝ない』というだけの話ですが・・・
外に出て散歩したり、ザックの中身を整理したり、
やがてPM5時、夕食です。
食欲はバッチリ、ごはんに味噌汁はおかわり自由、
満腹になり食堂をあとにします。
ものが食えれば怖いものはねぇぇえ~!!
高山病は大丈夫そうです。
ここが今夜の部屋、
さすがに平日、空いてます。
ゆっくり眠れそうだ~
消灯のPM8時前に外に出て空を見上げる。
満天の星空!!
・・・
明日はいい日になりそうだ・・・
・・・
部屋に戻り就寝。
明日は明日の風が吹く・・・
いったい俺はこんなトコでナニやってんだか・・・
14キロのザックが両肩に容赦なく食い込み、
ジグザグの急登に、足を前に出す事すらままならない。
AM11時、
通常の休みの日なら、
居間にころがってテレビでも見ている時間だ。
ところが現状はどうだ、
信穂高温泉をAM5時に出発し、
かれこれ6時間は登り続けている、
が、ゴールは絶望的に遠い。
はるか遠くの稜線上、
ゴツゴツした岩の隙間に人工物らしきものが認識できるが、
どうやらあれが今日のゴール、
槍ヶ岳山荘らしい。
幻のようだ。
さらに30分、
飛騨乗越への分岐にたどり着いた。
カメラのズーム機能を用いれば、
槍ヶ岳山荘も少しは近づく。
しかし、カメラから目を離せば、現実は厳しい。
今のペースではゆうに3時間はかかるだろう。
さっきよりも100mは高度を上げた筈だが、
幻が現実味を帯びるには程遠い。
見えてはいるが、一向に近づいてこないという現実は、
さながら悪夢の中にいるような感覚すら呼び起こさせる。
「ああぁ、帰りてぇ~」
思わず弱音が口をつく、
しかし、行程の最終段階に足を踏み入れてしまった今は、
ひたすら前に進むしか道は残されていないのだ。
いったいなんでこんなことになってしまったんだろう?
机上の予定では、
今頃槍ヶ岳山荘に到着している筈だったのだが・・・
作戦は万全のはずだった、
苦しい時に笑顔をひねりだし呼吸を整える
『ニコニコ有酸素運動作戦』は、
標高2700mの現時点で頭痛がないことから、
うまくいっているようだ。
『あんよふかふかクッション作戦』は
まだ下りじゃないのではっきりしたことは言えないが、
感触は良さそうだ。
『炭水化物&塩分摂取、朝定食作戦』は
40分ほど前に行って、少し元気を回復した。
『サプリメントで疲れを持ち越すな作戦』は
1日が終わってみないと効果がわからない。
『ストックが鍵、膝を笑わせるな作戦』は
現在進行形だが、調子は上々。
と、
個々に見ていくと、
それぞれの作戦は効を奏しているようだが、
それが全体の成果として現れていない・・・・
・・・・
・・・・
つまりは、
・・・・
・・・・
すっかり、バテて疲れきってしまったということなんですよぉぉお!!
何が原因なのか・・・
寝不足・・・
確かに昨日仕事が終わってすぐに用意して、
風呂入って出発して・・・
途中のSAで休憩はしたが、ほとんど寝てないか・・・
だいたいザックが重過ぎるっ!
長丁場に備え水を大量に入れすぎた、
いくらなんでも5リットルは必要ないだろう。
消費した水は山小屋で補充できるし、
まぁ、途中で気付き2リットルほど沢に流したので
多少は楽になった。
・・・・
・・・・
言い訳ばっか思いつくが、
1度バテてしまうと容易には立ち直れない。
素晴らしい景色には目もくれず、
稜線目指して一歩一歩、一心不乱に登り続けるしかない。
「はぁ~、うちに帰りてぇ~」
今日中に下山するのは無理だから、
槍ヶ岳山荘に泊まることになるのだが、
明日ゆっくり起きたら、速攻で今日来た道を取って返し、
家に帰ってゆっくり休むんだっ!!
かたく心に決めてしまう。
んっ、縦走計画ぅ~?
無理無理無理っ!!
こんな状態じゃぁ自殺行為ですよっ!
山の怖さは知っているつもりです、
帰ります帰ります帰ります!!
単独だしね。
そこは自由が利いて良いところなんですよぉ~
そう決めると不思議に力が湧いてくるようだ、
なんとか頑張ってPM1時30分、
稜線にたどり着いた、
飛騨乗越だ。
やっと山の向こう側が見える。
正面に見える鋭角は常念岳だ。
ここにきてやっと、槍の穂先とご対面。
普段なら感動的な景色だが、
今の私にはその余裕が無い。
「ああ、いいね。」
軽くつぶやいて先を急ぐ、
まだゴールではないのだ。
テント場を過ぎると槍ヶ岳山荘と『槍』そのものが全景を見せる。
さすがの迫力にしばし呆然と見入ってしまう。
我に帰り、ラストスパート、
PM1時50分、槍ヶ岳山荘着。
ザックを降し『槍』と対峙。
山荘にはまだ入れない・・・
まだ、終わってないのだ。
・・・・
ザックを残し、空身で『槍』にむかう。
久しぶりの岩場で少し緊張する。
なめてかかると滑落死だ。
そして、PM14時10分、
3180m、槍ヶ岳山頂です。
ああぁ、今日のノルマがやっと終わった~
達成感というか義務感というか、
とにかく肩の荷がおりた瞬間でした。
360度の景色はサイコー!!
しかし、長居せずにすぐに降ります。
明日の朝また登ってから帰ろ。
・・・
下りのほうが緊張しますねぇ~
宿泊手続き時に予定を聞かれる、
見栄を張って南岳から新穂高に降ります。
などと答えてしまう、
ホントは今来た道を引返すつもりだよ~
・・・・
・・・・
でも、
・・・・
・・・・
もし体力が回復したら南岳ぐらいまでは歩けるか、
そしたら3000mの稜線を縦走したことにもなるし・・・
・・・
まぁ、明日次第だな。
PM5時の夕食まで時間があるので、
部屋着に着替えゆっくりする。
ここにきて少し頭痛が、そして眠気・・・
高山病の予兆だっ!
決して眠るまいっ!
昨年の剣山荘の轍は踏まぬぞ。
深呼吸し水分をたっぷり補給し
臨戦態勢はOK。
とは言っても『寝ない』というだけの話ですが・・・
外に出て散歩したり、ザックの中身を整理したり、
やがてPM5時、夕食です。
食欲はバッチリ、ごはんに味噌汁はおかわり自由、
満腹になり食堂をあとにします。
ものが食えれば怖いものはねぇぇえ~!!
高山病は大丈夫そうです。
ここが今夜の部屋、
さすがに平日、空いてます。
ゆっくり眠れそうだ~
消灯のPM8時前に外に出て空を見上げる。
満天の星空!!
・・・
明日はいい日になりそうだ・・・
・・・
部屋に戻り就寝。
明日は明日の風が吹く・・・
2010-09-11 23:30
nice!(5)
コメント(9)
ドキュメントドラマを見ているようだ(;^_^A
by Kenbo (2010-09-15 09:02)
私も小説かなんかを読んでる気分でしたよ^^;
でも何故後悔しちゃってるのでしょうか!?
それにしてもいつもいつも好天に恵まれてますね~
by judyxxx (2010-09-15 16:39)
すごいですね~立てた作戦が上手く機能したと言うことでしょうか?
by 拳客 (2010-09-15 19:33)
>銀さん
nice!どうもありごとうございました。
by にょご (2010-09-15 19:44)
>Kenboさん
ちょっと臨場感を出してみたつもりです~^_^;
by にょご (2010-09-15 19:47)
>judyxxxさん
ちょっと気取りすぎちゃいましたかね~
登ったのを後悔するほどバテバテだったということです~
好天に助けられました。
by にょご (2010-09-15 19:52)
>拳客さん
個々の作戦はそこそこうまくいったと思います~
しかし、総合的にはバテバテでした~^^;
by にょご (2010-09-15 19:55)
私の富士登山の後悔と同じかも…
結果高山病にも…
by ひろちゃん (2010-09-22 21:52)
>ひろちゃん
もうこりごり、って思うんですが、
元気になると、リヴェンジを誓っている自分がいます~
by にょご (2010-09-23 00:44)